シットコム
うちのかあちゃん、今プチ老人介護放棄中。まあ、ばあちゃんはフィジカルな面での介護は要らないし、きっちょむいればいいので放棄してもとりあえずOK。ばあちゃんは放棄されてることに気づいてもいない。そもそも自分は多少忘れっぽくはあってもよもや自分に世話人が必要になってるとはまったく思ってないので、かあちゃんがご飯一緒にしなくても、口きかなくても、見限られてるとも思いもしていない。
事の発端はささいなこと。リアルなシットコムですよ。
ばあちゃんのカーディガンがあまりにも古いやつで袖が伸びきっているのと、いつも食事時に袖を食べ物につけてるのに気づいていないのでガビガビになっていたのとで、見かねて、かあちゃんが「もうそれはやめて新しいの買ってきたほうがいいよ」と、きっちょむと買いに行かせた。買ってきたカーディガンは2週間くらいタンスにしまわれていた。ある晩、「買ってきたやつ、明日デイケアで着たらいいよ」とばあちゃんに言うと「そうするわ」と答えた。
カーディガンは、茶色でラメがいっぱいついたもの。別段、地の色も変じゃないしかわいらしい。
着ていくわと答えたばあちゃんであったが、実はその日、丸一日かけてばあちゃんはそのカーディガンを“リメイク”していた。ばあちゃんは服を買っても、仕舞い込んで忘れるか、もしくは着ないでいきなり捨てることが多々ある。ただ、今回はカーディガンが記憶にはあったらしく、珍しく自分で出していたらしい。
で、一日かけて何をしたかというと、ついている小さなラメをすべてハサミで糸を切って外していたのだ。翌朝、かあちゃんは糸がぼろぼろ出ているそれを見て絶句。ラメは袋に入れてまとめて捨てるのならまだしも、燃えるゴミにバラバラのまま放り込んでいた。「それ、着てくの?糸、ひどいよ」というと「そうかしらねえ」「ほら、よく見て」「あら、ほんとねえ」「別なのに着替えてデイケア行って」と着替えてもらう。明らかに納得いってないばあちゃんの声。「糸でてていいんだったら着てけば」とすでに怒りにかられているかあちゃんが言ったら、ばあちゃん、また着替えて穴あき、糸ボロボロのカーディガンをホントに着ていった。
今日、改めて私はばあちゃんに聞いた。「何であんなスパンコール外しなんて面倒なことしたの?」「ほほほ。大変だったわ~。85のおばあちゃんがスパンコール着るの、変でしょう」「いや、全然変じゃないよ。他にそういうセーターもよく着てるじゃない」「そうかしら」「無地のを最初から選べばいいのに」「買ったときはいいと思って手にしたのよ。スパンコールに気付かなかったし。でもおかしいと思ったらうわーってやったのよ。可笑しいでしょ」、etc。
詰問調になっちゃうかあちゃんにはこういう返答しないで、のらりくらり返すか、「申し訳ない」を連発。そしてかあちゃんは余計腹をたてるのであった。
うちのばあちゃんは痴呆も立派に入っているけど、もともとがその場の争いさえ避けられればいいというポリシーでいるので、かなり言うことが状況によって変わるタイプ。嘘も方便、相手の言うことに常に同意しつつ実際の思いは違う。なので痴呆が入った今、何が本当なのかものすごく分かりづらい。誰かが「これおいしい」といえば「そうよね」といい「あれ、それおばあちゃんは嫌いでしょ?」と過去データからいうと「食べたことないわ」となる。「シャワー使えてる?」「もちろん大丈夫よ」は実際使ってない、となる。すごく細かいことを覚えてるのを見ると、特にかあちゃんの前では忘れたふりするのは、その場しのぎなのかなと思う。
とりあえず、他にもカーディガンのこと以外にイロイロ奇妙奇天烈あって、かあちゃんは今ストレスで相当不調です。
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