銀が宇宙に出発しました
夜12時半を過ぎ、銀を母の布団におろして託した。1時半頃の銀はとてもとても静かだった。呼吸の乱れも特に感じられない。
2:55、ガンガンガンガンと大きな物音がして目が覚める。母も起きる。
「あ、痙攣してる!」
お布団から出た銀が板の間にいて、押し入れの戸にぶつかっていた。
「床が濡れてる」
ここで私、ショックで漏らす。痙攣は止み、もう行ってしまったかと思うが、まだ息はある。
二度、三度、低くグーーという声がするのが聞こえる。チャタタラが二人揃って銀の様子を見に来る。
銀の呼吸が止まった。
オムツは履いていたものの、何の匂いもしない無色透明な液体が大量に出て、それが床を濡らしていた。
あぁ、銀ちゃん、行ってしまった。あっけなく行ってしまった。まだ数日はもつと淡い期待をしていたのに。
朝になり、ぬくかった体は冷たくなり、すでに硬直が始まっていた。
胸に乗せてみると、ずしりと重い。あんなに軽くなっていたのに、不思議な重み。量ってみると3.9kg。水分を出した割には変わっていなかった。
火葬するつもりでいたけど、家に骨壺置かせないと言われたので、それならそのままお庭で土に還しても同じだと思い、ハルキチの横に寝かせることにした。
爪を切り、尻尾とお腹の毛をほんの少し取った。栄養行き渡ってなかったから爪は伸びてないから2本しか切れないし、毛も艶を失っているのが悲しい。
最後に、肉球と喉と尻尾をさわってお別れをした。まだ柔らかいけど、こんな冷たい肉球初めて。ドキッとする冷たさ。喉を撫で撫で。昨日までしなやかにパタパタ動いていた尻尾ももう固まってきている。
銀の命を取った、おでこの憎き腫瘍は水分を失い、小さくしぼんでいた。
小雨降る中、Cが深く穴を掘ってくれ、庭の真紅のダリアとCが買ってきてくれた真っ白な花束を添える。
銀次郎、17年6ヶ月と6日、いつもいつもそばにいてくれてありがとう。17歳と8ヶ月、私にとってそれは早すぎる寿命だったな。
青い目、からみつく尻尾、顔の横にピタッとくっついて聞こえてくるトクトクという心音、胸の上にどかっと乗って見せてくる大仏のような顔、腕にしなだれかかってくる重み、私が左向きに寝るとベッドにトンッと軽やかに跳び乗り、ふくらはぎをフミフミしてどかっと乗ってくる重み、シュピーシュピーと聞こえる鼻息、湿った冷たい鼻、毛の流れに逆らうとザラッとする鼻梁、押し付けてくるおでこ、熟睡中のムニャムニャ寝言、夜中や早朝の飯くれ催促の声とリモコンガチャガチャ、要求通すときの圧、折りたたみ自在の耳、しなやかなひげ、ちっちゃなピンクのおっぱい、弾力あるアツアツピンク色の肉球、走ると左右に揺れるお腹、歯磨き習慣のお陰できれいな齒、リードを付けてのお散歩、数々のマーキング、庭に落とす立派なうんち、他所の猫との喧嘩、網戸破り、家出、怪我、ネズミ狩り、カラスとの遊び、お風呂場での水鉄砲遊び、犬とのじゃれ合い、私が腹痛で唸ってるとそれを吸収するかのような寄り添い、寝返りうつと暗黙の場所交換、唐辛子かじってこぼした大粒の涙、雪の上につけた足跡、洗面所で溜めたお湯に棒立ち、いつも肛門にちょびっとついてるうんち、適当な毛づくろい、ジャンプして落ちてくちょっと無様な姿、ドコモダケのキャッチアンドリリース、皮膚の薄いところを狙い撃ちしての甘噛み、ペロペロ舐められると感じるトゲトゲの舌、ぐうぐうよく鳴る喉、柔らかなお腹に顔を埋めると聞こえてくるお腹の音と香る太陽の匂い、年々茶色や焦げ茶の毛が増えていく毛、etc。
みゃうわうわー。
んにゃにゃ。
わー、うぉーん。
ずっと失いたくないと願ってきたのにな。
あたたかな銀がもう恋しくてたまらない。
サクラ、コナツ、ウシオ、ハルキチ、銀が行くよ!よろしくね。













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