大好きなウシオくんへ
2019年6月26日午後23時27分、ウシオはこの世を卒業しました。
ゴールデンウィークのさ中、沖縄本島の病院に行って診察を受け、細胞診の結果、メラノーマの可能性大という悲しい知らせが届いた。手術でとるにはもう上顎の腫瘍は大きすぎ、しかもリンパまで転移していて無理だった。一泊二日の飛行機を使っての診察を、ウシオはひとことも発さず、素直に、お利口さんにやってきた。まるで人間のように、当然の顔をして那覇空港のエレベータに乗ってる姿を想像するとちょっとおかしくなる。
5月はまだ食欲は普通にあって、散歩にも普通に行っていた。タコ助に、おれのご飯に手を出すなよといういつもの脅しもかけていた。タコ助は別にウシオのご飯に興味あるわけでもないから、残念な脅しなんだけど、そんな姿を見るとまだまだ大丈夫と思えた。腫瘍は頰を貫き、どんどん増大していたけど。
6月に入って、だいぶ体が痩せてきているのが目につくようになった。食べているのに痩せていく。ガンに栄養を持っていかれているのが悲しかった。
そして食欲そのものが減り始めた。1日2食が朝食べなかったり、半分だけになったり。体重は15.4キロまで落ちた。元々20キロ近くあってまるで段ボール箱のような体型と揶揄されていたのに。合わせて散歩で行ける範囲も狭くなった。
6月20日、コナツが亡くなった。
ウシオはまったくご飯を食べなくなった。2回、マグロは食べた。燻製にしておいた塩漬け豚も数切れ食べた。ヨーグルトを舐めた。AD缶をシリンジに詰めて食べさせた。フィラリア予防薬はぺろりと食べた。少しでもカロリーを取って欲しかった。
6月25日、ヨーグルトを見せても顔を背け、歯を食いしばって何も口にしたくないと言った。立ち上がってその場から逃げた。あぁ、これは最後通牒だなと思った。朝、犬歯を一本吐き出した。
お昼頃、すくっと立ち上がっておしっこにいきたいと言った。もう何日もまともに寝ていないようなのに、意識は常にクリアだった。
水だけは大量に飲むので、これではさすがにバランスが悪かろうと、夕方、皮下で体液と同じ濃度にしたリンゲル(?)を補液した。
夜は外に出て、おしっこするにも、ちゃんと出なかった。
目をキョロキョロさせて、上目遣いにする、ウシオらしい表情は健在だった。
深夜も水飲みに風呂場に来たり、うろうろしていたりした。
6月26日、相変わらずヨーグルトを見せても口にしようとしない。仕方ないね。ぐしゅんぐしゅんと鼻腔からの膿と血液の混じった液を出す日々。腫瘍は左側の顔をずいぶん変えてしまった。静かにうつ伏せになっていた。夕方、補液。しばらくすると脱水が少し良くなったのか目に潤いが戻り、動きも良くなった。
ときどき呼吸の音がハーハーと大きく聞こえるようになった。
22時過ぎも気になる呼吸音。それから半時間ほどして、ゼーゼーしながら立ち上がり、風呂場へ行こうとしてへたる。顔色がものすごく悪い。悪い予感がする。明け方あたり、危ないのかなと思った。二階からきっちょむさんを呼び、お風呂に入っている間、付き添いを任せる。
そして、ウシオは旅立った。
何気にウシオはきっちょむさんに忠実だったから、その時を一緒にいたのがきっちょむさんで良かったのかもしれない。
タコ助はびっくりしていた。いつもならスリスリしにいくのに、横たわるウシオを見て、は!っと跳びのき、どうしたの?と言わんばかりに手でウシオの手にちょんちょんと触れて、すぐに離れた。そして机の上からじっとウシオを見つめていた。
一夜明けて、まだウシオの不在に感情がついていかない。
とにかく寂しくて寂しくてたまらない。
柔らかなその垂れ耳をくしゃっと丸めることがもうできないんだな。
この島に来て間もなく出会ったウシオくん。ここでの生活を共にしてきたウシオくん。一緒にビーチに行き、ドライブに行き、泳ぎ、バンナを歩き、楽しかったよね。
次の場所でも一緒に暮らしたかったよ。
ちょっとビビリでへたれで、慎重で、優しくて、怠惰で、お目々キラキラで、きれいなお姉さんが好きで、きれいなお姉さんじゃなくてもとにかく人間が大好きで、コスプレすると目が死んで、タコ助には偉そうで、ギンには道を譲り、泳ぎが得意そうでいて実は波打ち際を愛していて、車に乗りたすぎて運転席に座って、ボールをわざと隠して人間に取れとしつこく言って取らせて、ヨーグルトを人間が食べ終わる頃を見計らってその容器くださいと目で訴えて、でも一度もおやつくれ、ご飯くれとワンって言ったことなくて、ご飯忘れられたら悲しい顔してるだけで、よく猫をけしかけてあんパンを上から落としてもらって食べて、ノミダニ駆除薬は自らこうべを垂れて付けてくださいとベストポジションをつくり、献血犬として活躍し、夜は必ずハハのベッドで寝て、掃除機かける時だけ私のベッドに乗り、散歩はサボろうとして、声をかけてもなかなか出発せず、のんびり大きなのびをし、壁に寄っかかってヘソ天にして昼寝して、おもちゃは柔らかなボールが大好きで、でも子犬時代にあげた小さなボールも大事にしていて、どのおもちゃも大事に遊んでくれて、ベッドに乗せてはひっくり返って背中でぷーぷー音鳴らして喜び、お客さんに得意げに見せびらかして、ドライブに出かけた先で車から出た後、なかなか帰ってこないくせにドア閉める音させると自分だけ置いて行かれるんじゃないかと大慌てで戻ってきて、お手を何十回でもやってくれて、ああ、他にもたくさんウシオのこと書けそうだな。
そうだ、子猫やヒヨコ、子ヤギ、赤ちゃんにも優しくて、自分がこの子たちを守るんだと正義感に溢れていたな。
私はすぐにものごとを忘れてしまうから、ウシオの細かなあれこれを今のうちに書いておかないとな。
までも、とにかく優しくていいヤツだったな。
また会おうね。ウシオのこと、大好きだから。
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